#フレイ小話
くるんとした目がテーブルの上に置かれた大きないちごに向けられている。
赤茶色のふわふわとした髪の毛。少し長い襟足を麻の紐でちょこんと結んでいる。
今朝方村を訪れた旅の一団の子供だろうか。
「ほしいのか?」と問えば目をキラキラさせて頷く。
紅い実の入った籠を差し出せば、十にも満たない幼い少年は、ふくふくとした小さな手でその実を摘み上げる。
少年の手一杯の大粒いちご。
嬉々として小さな口に実を頬張る様子が微笑ましい。
名前を問えば、彼はビー玉のような蒼い瞳で自分を見上げ、小さくフレイと名乗った。
#ヘブンズエッジ小話
猛暑である。
老体にこの暑さはきついとぼやきながら遠征から期間したアランは、事務所のソファーでだらりと寝そべる姿を見つけ、その額に青筋を浮かべた。
「俺スイカ食べたい」を十回ほどアランの耳元で繰り返したその男は、人の苦労も露知らずといった体で、すよすよと寝こけている。
タンクトップとハーフパンツだ。
スルトのカラーを悉く無視し腐った涼しげな恰好に、アランは更に眉をしかめ、タンクトップの間から覗いた薄い腹の上に手土産の丸い大玉スイカを落とした。
「ふおあ」
ビクンと体を揺すり起き上がった青年は、腹から転がり落ちそうになったその実を慌てて抱え込み、体を起こす。
「お、お帰り」
「りっひ、アランさんはそれ買ってきたから」
「うん、ありがと」
「切ってね」
「……えー」
不満げな声を漏らす青年の腕をつかみ立たせれば、リヒトはのろのろと給湯室に歩いていく。
リヒトの寝ていたソファーに疲れた体を横たえれば、丁度エアコンの冷風が辺り非常に快適だ。涼しい風と、ソファーに残る温もりにうとうとと目を閉じれば、廊下からスイカだ!とはしゃぐフィリアと玉響の声が聞こえてきた。
*
尻切れトンボ。