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二人

扉を開けた途端に視界に日の光が飛び込んできて、シンは思わず腕を上げ瞳を細めた。コマドリのいくつか有る甲板のうち、一番広いのが後部最上層に位置するこの甲板だ。西に沈む日を横目に、シンは甲板の端へ歩み寄ると手すりに手をつき下へ視線をやった。はるか下はやや険しい山脈が広がり、その峰にはちらほらと雪も垣間見える。
コマドリは今、ミンディアのさらに北の上空にある。ミンディア以北に確固とした国家はまだ確立されておらず、そのため国境線も確定されていない。またこのあたりはかなりの山岳地帯のせいか、集落も殆どないようだった。
気温は0度をかるく下回っているのだろう。肌を刺す風の冷たさにシンは襟元を押さえ、羽織っていただけのジャケットの前を止めこむ。
今まできていたコートは割り当てられた部屋の隅にかけてある。肩に教会の紋章が入っている純白のコート。それをコマドリ内でずっと着続ける訳にはいかず、ミンディアを出る前に厚手のジャケットを含めて何枚か服を新調した。もっとも服はシンの代わりに「これ似合うんじゃない。あ、ほら、これとか」と楽しそうにカインがひょいひょいと適当に選んだものだ。だが落ち着いた色調の育ちのよさそうな服は、実際シンにとてもよく似合い、シン自身も気に入っている。
「……きたか」
落とした視界の先に待っていた姿が現れシンは数歩後ろに下がり、手すりから離れた。フォン……と空気を震わせ下層の射出口から飛び上がってきた丸い機体がシンの目の前の空中で静止する。コマドリの所有する個人用戦闘ポット『エンケ』だ。以前カインが飛び乗った機体もこれと同じもので、キャサリンとジェフの共同設計だと聞いた。個人というが、二人程度が乗れるスペースがあり、立ったままで操縦桿を握る。
ホバリングの細かい音が少し耳に痛い。
「シン様、お待たせしました!」
その音に消されない、はきはきとした声と共にポットのタラップに脚を書け、ショートカットの、オレンジがかった髪色の少女が顔を出し、ゴーグルをあげた。初めて会ったときにリズが着ていたのと同じ、体にフィットしたスーツを着ている。快活と表現していい明るい雰囲気が彼女を包んでいた。
「艦長から話は聞いてます。私、ユッカって言います。今からポットの操縦の仕方をお教えしますね!」
そういって少女はゴーグルをまた装着しなおしまた操縦桿を握った。
「とりあえず習うより慣れろっていいますし、一回私の操縦を見たら今度はご自身で操縦してみてください。大丈夫!ドジな私でも操縦できるんです。すぐ慣れますよ!」
ポットを甲板ギリギリまで近づけて手を差し伸べる。
「じゃあ行きますよ!乗ってください!」
ユッカはそういって猫目がちな大きな瞳でにっこりと微笑んだ。

 

 

「……っ」
めまいを感じてカインは開いている右手で目頭を押さえ、壁に寄りかかった。だが腕の力が緩んだのか、右手に抱えていた工具箱を落としてしまう。
「あー……」
重い音を立てて床に落ち、中身をばらばらと零した自前のそれを、指の間から見下ろして小さくため息をつき、壁に背を預け目を閉じた。
ガランとした通路の先、奥の休憩室からはメンバーが集まっているのか談笑する声が聞こえてくる。
(酔ったかな)
一瞬脳裏をよぎり、カインは自嘲した。そうではない事など自分が一番良くわかっている。このめまいはこの船が揺れているから起きたのではない。三半規管の問題ではないのだ。
少しずつ、遠回りではあっても。
今はまだ遠いけれど、確実にその時は近づいている。小惑星が巨大な星へと逃れようもなく引き寄せられるのと同じだ。
(気持ち悪い)
内側から押し上げられるような鈍い痛み。思わず胸部に手をやって、服を握り締める。指先に首にかけた指輪が当たり、服と共にそれも手のひらに握りこんだ。
大気がざわめいている。いつまでも塞き止めておけはしないなんて、とっくの昔にわかっていた事なのに。
歪に歪んで、不自然に実体化して、けれどそのままで存在などしていられなくて、結局閉じこもっている。一度歪んでしまったものを、一度固まってしまったものをもう一度もとの形にするのは至難の業だというのに。
(呼ぶな。まだだめだ)
引くな、気持ちが悪い。
試すな、そんな巨大な質量で。
まだ駄目だ、今のままでは戻れない。

歪に歪みすぎて、元の形がわからない。

ゆっくりと瞳を開け、顔をあげる。
なんの変哲もない、幾分手垢で薄汚れたエアシップの壁。
無意識に硬く目を瞑っていたのか、その民族的壁紙の、模様の輪郭がぼやけている。
眼球の表面を覆うのは、乾いていた瞳を潤すために出た涙。
だけれどそれに酷く安心して、カインは細く息を吐き出した。
まだ涙が出る。まだ、人としての機能を失っては居ないらしいと。
(……シンかな)
再度上げた視線の先、射光用の小さな窓の外を一機のポットが横切っていくのが見えた。
広がる青が、目に痛い。
『ホームに行きます』
ミンディアを出てすぐに開かれた幹部を集めたミーティングの後、伝声管から伝えられたリズの言葉。その言葉にエアシップ内、数十名の乗組員たちの顔に笑みが浮かんだ。どの部屋でも、おお……というどよめきの後、近くの仲間と友に言葉を交し合う。
「ホーム?」
動力室でジェフの他、数名のエンジニアたちと友に、床に座り込んで作業をしていたカインは、彼らの顔に一様に浮かんだ笑顔に首を傾げた。 カインの言葉に「拠点だ」とジェフが答える。
「コマドリの面子はこれに乗ってる奴等だけじゃねえからな。非戦闘員や今回乗らなかったメンバーは隠れ里で生活してんだ。ま、ホームは能力の為に故郷を追い出されたり、出てきた奴等の第二の故郷だな。そっちに家族がいるやつも大勢いる」
そうカインに説明すると、ジェフは腕組を解いて操縦パネルの前に歩みを進める。途中で喜びの声を交わすエンジニア達に「おら、手やすめんな」と釘を刺すことも忘れない。
その間もリズの伝達は続く。
『進路は一旦北北西にとって、用心のため遠回りしていくことにするわ。原始の森を通ってホームへ向かいます。ジェフ、安全運転よろしくね。また通過時には甲板に出ないように。鳥に食われても知らないわよ』
「うわ」
リズの言葉を聴き、カインは思わず声をもらした。
『原始の森』とは大崩壊後、何らかの影響で急速に成長した巨木林だ
面積は小さな国家なら飲み込むほど広大で、巨木の高さは殆どの木が数百メートルに達する。まさに巨木中の巨木だ。あまりに混沌とした森なので、いまだ内部の状態は解明されていない。
木とつりあうほど巨大な怪鳥が育っていただとかの逸話も多い場所への期待に無意識に笑みが浮かぶ。持ち前の好奇心を刺激される。
にこにことした笑顔を見せるカインに気づき、ジェフは渋い顔をむけた。
「お前な、木の間を縫って飛ぶんだぞ。ぐっらぐらゆれるぞ」
「俺酔わないよ?」
座り込んだまま、操作パネルの前に立つジェフを振り仰ぐ。だからだいじょーぶという笑顔に、ジェフはますます顔をしかめ「操縦するのは俺なんだ。……くそ、人事だと思いやがって」とぼやいた。だが嬉しそうな笑顔の前にそれ以上悪態をつくことも出来ず、ジェフは無骨な機械の腕でガシガシと頭をかくと、ため息をついてまたパネルへ向き直った。どうも調子が狂う。
『いーい?久しぶりに帰るからって気抜くんじゃないわよ。あくまでミンディアで出来なかった物資補給のためなんだからね!その後は、――トスカネルに戻ります』
搭乗員皆がぴたりと会話を止め、真顔で伝声管を見つめる。
その言葉が示すのは、ひとつの大きな区切りがやってくるということ。
もう一人の、審判者の救出。
『各自準備を怠らないように!ふんどしきっちり絞めときなさい!』
『おお!』
短くも力強い声が澄んだ上空に響き渡った。
――が、
『あ、もいっこ』
以上かと思われた艦内通信は、数秒後突然再開された。なんだ?と顔を上げる隊員達の中、先ほどより幾分気の抜けたリズの声が続く。
『カインくん、ちょっと艦長室までダッシュで来てー』
「へっ」
『ダッシュよー』
「ええっ、なんだろ」
カインは首をかしげてからひょいっと立ち上がり、「ちょっといってきまーす」と言って駆け出す。作業の手をとめて「なんかやったのかー?」と面白そうに声をかけるエンジニア達に「やってないとおもうけどなー」と困った顔を返し少年は廊下へと出て行った。その後姿を横目で見送り、ジェフはまたハァとため息をつく。
どこか独特のテンポで動き、周りを巻き込む空気を持つタイプがジェフにとって嫌いではないが唯一苦手なタイプだ。口が悪く押しの強いタイプである自分が、さらりとかわされ調子が狂う。
まだ少女だったリズがホームを出て、船に乗りたいと言ってきたときも、「ふざけんな小娘が何いってやがる」と怒鳴ったが、まったく意に介さず「大丈夫よう」と笑うリズに結局押し切られてしまった。その時とよく似ている。
(あいつもだったか……)
飲み込みが早いし腕もあり、人の言うこともきちんと聞くお気に入りは、よりにもよってこのタイプだったらしい。こういうタイプをどういえばいいか数瞬考え、ジェフは一つの言葉に行き着いた。
食えない奴。どんなに外見と笑顔で取り繕っても隠せないしたたかさがカインからにじみ出ていた。
暗澹たる気分になってジェフは操縦パネルにつっぷし、何事かと視線を向けてくるエンジニア達をぎろりとにらむと「おら、こっちみてねえできっちりやれ!」と怒鳴りつけた。

 

 

轟々と森が鳴いている。個人搭乗用ポッド『エンケ』から身を乗り出しカインは冷たい風の中、自身を取り囲む森へと視線を巡らせた。腰に括りつけた落下防止用のベルトが少し緩い。
(大丈夫かな)
気になってベルトを締めなおそうかと視線を落とすと、操縦桿を握った同乗者の横顔が見えた。ベージュの厚手のジャケットを着込んだ彼はポッドを操縦しながら反対側の森の奥へ視線をやっている。シンだ。
「……お前、上手くなったな」
その手元に視線をやって、カインはそう口にした。カインの言葉に何だという顔で、シンが視線をちらりと向けてくる。
「そっちのドアにつけてあるスコープとって。ほら、下の方」
付け加えたカインの言葉に、シンは自分の立った側のドアに備え付けられた遠視スコープを片手で探り、手渡す。
「……何が」
「操縦」
それを受け取りカインは視線をシンとは反対の方向へ向ける。
高さ数百メートルに達する森の木々。だがその枝葉はあまり繁りはせず、上空の寒さに耐えるかのように自身の幹に腕を縮こまらせて背だけを伸ばしている。そのため広大な原始の森は案外下まで日が差し込み明るい。
(綺麗だ……)
見上げれば遥か頭上に木々が僅かな枝葉で空を覆っていて、ちらちらとその合間で光が瞬く。時折ぽっかりと明いた空間から、林立する木々の合間にくっきりとした線を描き差し込む光の帯と、細く高い幹の合間を縫うようにシンの操縦するポッドは進む。光の中と木陰ではかなり温度差があって、カインは明るみの中にポットが入り込む度、その暖かさに嬉しくなり目を細めた。
ぼんやりと視界の先に広がる森を見渡す。広大で、だがひょろりとした木々ばかりでどこか痩せた印象のある森。だがそのお陰か日の光は森の奥まで差込み、見下ろした地面は鮮やかな草で覆われ、緑に光っている。それがどこか豊かな森のように感じて(不思議だ)と冷たい空気と、ほんの少し肌の表面を暖める光を感じながらカインは思った。
視線を僅かに落とし、背後を振り返るとポッドより少し下方を緑をバックにコマドリがゆっくりと飛んでいるのが見える。ポッドならともかく、あの大きさの機体でこの森林の中を抜けるのはかなり高度な技術を要するのだろう。
(当たってるんだろうなー、おっさん)
ジェフがしかめっ面をして周りのエンジニアにあたりながら操縦しているのだろう光景を想像し、無性におかしくなる。
「……練習したんだ」
「え?」
唐突に後ろ(後ろといっても、進行方向の逆を向いているカインにとってであって、声を出したシンは前方をにらみつけるようにして操縦桿を握っている)から声が返ってきて振り返り、黒い後頭部に頭をぶつけそうになってカインは僅かに仰け反った。慌ててそっと元の体制に戻る。狭さの関係でくっつけ合っていた背中が僅かにはなれて、またふれあった。
男とくっつき合っているなんて、あまり歓迎できた状態でもないが、久しぶりの温もりが気持ちよかったのも事実で。
状況に甘んじてその意外と広い背に寄っかかってみれば、ほんの僅か、シンが体を硬くしたようだった。
(嫌だったかな?)
やっぱ嫌だよな。
そう思いながらちらりと視線をやる。だが、どうやら何も言わずにシンは背中を自分に貸してくれるようだ。
訪れた奇妙な沈黙の後に、かろうじて聞き取れる低い声でシンは呟いた。
「――何か、できる事を」
「……うん」
言葉を選ぶようにゆっくり発されたその言葉に、自然と笑みがこぼれる。
何かひとつでも自分のできることを。
きっとそんな思いなのだろう。ナイツの大型戦艦と相見まえたその時、彼が見せた悔しげな表情を思い出す。
(誠実だね)
艦長室に呼び出され、窓の外の夕空をバックに何かの書類に汚い字でサインをしていたリズに言い渡されたのは、原始の森飛行中、ポッドでエアシップに先行し、偵察と、もしもの時の先制攻撃を行うことだった。
「とりあえず何か協力したい」
そんなカインの申し出に、最初リズはいぶかしんだ。
そもそもコマドリにカインが乗っているのは、強制されたからであり、有り体に言えば攫われてきたのだとも言える。そんなカインが協力を申し出るのも不思議な話だとリズも、他の隊員達も思ったらしい。だが、あのままクレアの遺体と共にあの場所に残っていたとしたら、コマドリではなく教会へと連行され、実験材料ににでもされていただろうから、その事に付いてはこだわっては居ないという事と、このまま動力室メカの修理をし続けるのもいいが、少しくらいは外へ出てみたいという事を両手を合わせて頼み込んだ所、カインと同じく閉塞感が嫌いなリズは納得してくれたらしい。
どの程度力が使いこなせるのかの簡単な能力査定を経て、カインは正式にコマドリの隊員登録を完了させた。「もう使いこなせる」とシンに言ったのは嘘ではない。体の隅々に力を巡らせ、イメージする形で放出する。そんなこつのようなものを、目覚めた後からごく自然に思い出せる様になっていた。
今回の仕事はカインが自身の能力を使いこなせることを確認した結果だろう。広範囲に力を及ぼすことができる攻撃に特化したカインの能力は、希少だ。十中八九その力を買われたのだろうとカインは考えている。
「まあ、私たちが森を抜けようとしているとは敵も流石に読んでは来ないと思うけど、用心に用心をってね」
そう言い「宜しく」とカインの肩をリズはぽんと叩いた。そして「あとねー」と少し複雑そうな顔をしてリズは付け加えた。
「シン君もいくから。てかこれから君に付いていくみたいだから。宜しく」
「はあ?」
ぽかんと口を開けたカインに、楽しんでいる気配のにじむ苦笑を向けてリズは笑う。たれ目の瞳がにやにやと笑っていて、カインは嫌な予感を感じた。
「『アイツは能力的にも得体が知れない。自分は体術には自信があるから、もし君が寝返っても自分なら対処できる』だそうよ。」
「……なんだよソレ」
「まあ、口実に使われたのよ。動き回る為のね。ご愁傷様」
「……あいつ、澄ました顔してえげつないな」
苦虫を噛みつぶした様な顔でカインは唸った。せっかく羽を伸ばせると思ったら、大きな荷物が付いてきた。
「大丈夫なのか?俺なんかと外に出させて。アイツ重要なんだろ、コマドリに取ってさ。」
首をかしげるカインの言葉にリズは大きくため息をつく。
「反対したのよ?君にもしものことがあったらどうすんのよって。でも頑として聞かないの。『無茶はしない。だけど何もしないで居るのは嫌だ』って。結構強情だったのね、彼」
「そんで、動き回る手段が俺ってことか……」
正直良い迷惑だが、まあそこまで邪険にする気力もない。
「こっちとしては、シン君と君がセットで行動してくれた方がたすかるわ。貴方はリシュヴェールに攫われたりしたら面倒だから、まだ目の届く範囲にいて欲しいし、シン君も少しは息抜きしたいだろうし」
そういうわけだから偵察お願いね、というリズの言葉を渋々承諾して艦長室を出る。
すると自分が出てくるのを予想していたのか、廊下の壁に寄りかかりシンが立っていた。目が合うがカインは何を言えばいいかも浮かばずに眉を下げる。その表情に、シンも無言で困ったような顔をして、壁から背を離した。口実に使われたことに対しても、得体がしれないなどという酷い言われように対しても、うっとうしさは感じるが、怒りは覚えない。面倒事は嫌いだ。何より自分は余程のことがないと感情が怒りの域まで達しない。
「あのさ、」
「ごめん」
切り返すかのように言われたその言葉に、カインはあきれて言葉を失った。
「……何だよそれ」
肩を落とし漏らした声に再度シンはすまなさそうに「悪かった」と同じ言葉を繰り返す。前も似たようなことがあったな、とふと脳裏を数日前の夜がよぎった。
こいつも必死なのだろう。それが分かるから苦笑を返すしかなく、カインは肩をすくめて「いいよ、別に。それより、俺はまだなれて無いんだから、援護よろしくな」と手を振る。
そのままシンの前を横切る。シンの黒い瞳が自分の背を追ってきたのが分かったが、仲良く絡む気もないから無視した。
自分の反応を気にしていたのだろう。背後からシンが安心したようにため息をつく声が聞こえてきた。

 

(生真面目すぎる奴が頑張るのも、色々大変そうだなあ)
スコープの先を覗きつつ、背後の、どうもがちがちに固まっているような気配に対してそう考える。
視界の端ではコマドリが大きな弧を描いて巨大な樹木を迂回していく。四方へとスコープを向け気を配るが、時折甲高い声を上げて鳥らしき陰が遠巻きに飛び立つのを除いては、機影らしきものは見当たらない。見た限りではミンディアを出てから追っては付いていないようだった。
「カイン」
「ん?何?」
シンの声に振り返ると、進行方向で僅かに森が開けているのが見えた。やけに明るく感じる白い光がぽっかりと口を空けている。
「出口か……」
「もどろう。その先にリズ達のホームがあるはずだ」
シンの言葉に頷いて、カインは緩めだった腰のベルトをきつめに締めなおす。互いの背が密着して、シンが小さく息を詰めた。
「キャサリンさん!出口みえました!戻ります!」
船長室で鋭敏な聴力をさらに研ぎ澄ませているだろうキャサリンへ向けて、声を大きめに発するとポッドの縁に両腕を張って体を支える。それを確認し、シンが斜め下を進むコマドリへと帰還するために操縦桿を横へ切った。
視線の先で漏れでた白い光が斜めに走った。

 

 

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